芳しき、誘う穴子の香ばしさ

あなご屋
銀座ひらい
和食 東京・銀座

こだわりの“めそっこ”は焼いてよし、煮てよし

ただ柔らかいだけと思ったら大間違い。『あなご屋 銀座ひらい』の穴子はその食感に驚かずにはいられない。蒲焼きはムチッとした小気味よい弾力。関東では珍しく、蒸さずに生から焼くスタイルで、噛みしめるほどに身のハリと香ばしさを味わえる。煮穴子は空気をはらんだように軽やかでふっくら。身の繊細さをじっくり堪能できる。そしてこの両者を一緒に楽しめるのが名物の「箱めし」だ。使用するのは“めそっこ”と呼ばれる1匹100~150gほどの小サイズの国産穴子のみ。「焼いても皮目は柔らかく、本来穴子に多い小骨も気にならないのがいいんです」と店主の平井良和さん。蒲焼き、煮穴子、そしてごはん、とそれぞれ異なるタレを作り分けて使い、穴子の下に隠れた大葉や海苔、昆布も抜群の相性で、いいアクセントとなっている。

穴子料理とは

江戸前寿司に欠かせない、愛され続ける伝統食材

ウナギ目アナゴ科の海水魚・穴子。150以上の種類があり、日本で穴子といえば浅海の砂泥底に住むマアナゴをさす。江戸の昔から東京湾の羽田沖で獲れたものが江戸前の本場物と愛され、今も東京湾岸各地は漁場の一つ。西は瀬戸内海が有名だ。もとは焼いて食されたが、1800年代に握り寿司が登場して以降、ネタの一つだった煮穴子は江戸前寿司には欠かせない存在に。旬は脂の乗る夏と冬。鮮度が命なので朝仕入れるや否や活〆をし、裁き方は鰻と同様、西と東で異なり、関東では背開きで行う。おろし方で口当たりが変わるため、包丁の角度すら部位に応じて微妙に変えるという。そうした繊細な仕事により、穴子は美味しい料理へと生まれ変わるのだ。

銀座ひらいのこと

その思いと仕事は、元・寿司職人だからこそ

『あなご屋 銀座ひらい』の開店は5年前。元々、寿司職人であった平井さんにとって穴子は身近な存在だったという。「穴子の仕込みはなぜか得意で、誰にも負けなかったんです。親方に褒められて、お客さんにもおいしいと言われてきたので、ふと、自分が何を作れば喜んでもらえるかを考えた時、辿り着いたのが穴子でした」。穴子料理の名店『日本橋 玉ゐ』で経験を積み、さらなる自分の穴子料理を求め独立に至った。穴子の仕入れは独特で、市場でセリがなく信用取引で行われる。だが、平井さんには寿司職人時代から仲卸との信頼関係が築かれていたため、通年、良質な穴子を選ってもらえるのだという。銀座の隠れた路地にありながらミシュランガイドの「ビブグルマン」に3年連続で掲載されるのも、実直に穴子と向き合い、良心的な価格で提供し続ける仕事ぶりが評価されているからこそなのだろう。

箱めしについて

店内と同じ美味しさで味わえる理由は、たれにあり

『あなご屋 銀座ひらい』はわずか18席のため予約は必須。ふらりと訪れても絶品の穴子料理にありつけないこともある。だが、『逸品弁当』であれば限られた特等席に着かずとも、看板メニューの「箱めし」を同じ美味しさで味わうことができる。「温められる容器での販売もありますが、冷めても大丈夫。時間が経っても味が落ちないよう、うちのは煮穴子の“詰めだれ”も蒲焼きの“かめだれ”も味を濃いめに仕上げています」と平井さん。めそっこの穴子が、大葉や海苔をまぶしたごはんの上にお行儀よく並ぶこの「箱めし」は、2本は「ならび」、3本は「いかだ」、4本は「かくし」と本数が選べるだけでなく、「ふっくら煮穴子」、「香ばし蒲焼き」、その両方を乗せた「両のせ」と、組み合わせも自由に選べるのが嬉しいところだ。

穴子料理の魅力・奥深さを再発見できる「箱めし」で、あなたの好みの味わい方を見つけてみてはいかがだろう。