USビーフの滋味に目覚める

IPPIN STORY
厳選焼肉 ニクノトリコ
焼き肉 東京・六本木

惜しげもなく盛られたカルビは200gの重量級

弁当箱からはみ出さんばかりの肉、肉、肉。『厳選焼肉 ニクノトリコ』の弁当はいずれも肉だけで150g以上。店の看板メニューである「王道カルビ御膳」なら200gもの大盤振る舞いのボリュームだ。切り方にもこだわった中厚切りのカルビが、贅沢にも12~14枚、白飯の上に波立つように重なり合っている。「蓋が閉まるぎりぎりまで入れました。お弁当は1日の活力源。質はもちろん量も大事ですから、がっつりと食べてもらえる品にしたかった」と店主の稲垣雅晴さん。箸でつまんだ一切れの存在感たるや。噛めば、肉らしい食感のすぐ後に待つ、とろけるような柔らかさ。甘辛のたれと相まった肉の旨味も口いっぱいに広がる。その余韻に浸りながら、同じたれがしみたごはんを一口……。もう箸は止まらない。

店主
稲垣 雅晴
厳選焼肉 ニクノトリコ

焼肉ひとすじ22年、満を持しての出店

六本木の賑やかさとは無縁の静かな路地に、2016年に開店した『厳選焼肉 ニクノトリコ』。ユニークな名の由来は、「お客さんをお肉の虜にしたい」という思いから。「でも本当は自分が虜なんです」と稲垣さんは苦笑する。それもそのはず、稲垣さんは焼肉ひとすじ22年。大学卒業以来、縁あって焼肉業界に身を置き続け、様々な店舗、業態を経験。牛一頭解体できる牛肉のプロや元一流ホテルの料理人といった凄腕の大先輩の下で、切り方ひとつでおいしさが変わる肉の奥深さに魅了された。「一番の収穫は、輸入牛の生産現場を視察できたこと。特にアメリカは衛生管理も肥育方法も日本の何十年先も進んでいて衝撃的でした。そして味。現地のステーキがなぜこんなにおいしいのかを考えました」。和牛はマグロでいうなら養殖に近く“さし”の多さが魅力。だが、年齢を重ねるとともに量を食べられなくなるのが玉に瑕。量を食べたい時はグレードの高い赤身のUSビーフが最適だという考えに至ったという。

肉へのこだわり

こだわりは、USビーフと40日間熟成

『厳選焼肉 ニクノトリコ』で扱う肉はUSビーフメイン。アメリカにおける格付けで最高グレードを表す「プライム」と、厳格なアンガス牛認定制度をクリアした「サーティファイド・アンガス・ビーフ(CAB)」の2本柱にこだわる。王道カルビに使われるのは後者だ。「USビーフはトウモロコシを食べさせているので、さしはあっても脂の質がよくて消化しやすく、臭みも少ないんです」と稲垣さん。ちなみに仕入れは、個人店では珍しく卸ではなく商社と直接やり取り。こうして品質と価格を維持できるというが、長年培ってきた経験と人脈があるからこそなせる業だろう。また、もう一つ欠かせないのが熟成のこだわり。しめたてに硬くなる肉は本来寝かせるのが常。こちらではその方法に、肉を無駄なく使えるウェットエイジングを採用。驚くのはその期間で、「30日程度ではまだ浅い。うちは屠殺してから最低40日間熟成させたお肉を使います」。冷蔵庫の中で水分を保ちながらゆっくりと寝かせ、グルタミン酸をじっくりと増やす。極上の旨味と柔らかさは、そうして育まれている。

焼肉を弁当にすること

「箱に詰めてもおいしい」を目指す焼肉店の挑戦

「焼肉は焼きたての温かいお肉なので、冷めてもおいしいお弁当にすることは挑戦でした」と稲垣さん。作りたてと時間経過したものとでは味が薄まることから、塩度を意識し、例えば王道カルビなら、焼く前の肉にたれをもみ込むだけでなく、ごはんにも盛り付けの仕上げにもひとかけ。味付け自体も、王道カルビは九州の醤油ベースの甘口たれ、ステーキ系にはガーリックとオニオンのステーキソース、ヒレ角や赤身四種盛には塩だれなどと、それぞれのメインに合わせて使い分け。肉の切り方も工夫し、脂の凝固を避けて脂身は極力削ぎ、硬さを感じにくい厚みを心がける。副菜には、擦りゴマをたっぷり和えた胡麻まみれ豆もやし、店仕込みのナムル、牛肉ゴボウ煮などの店の定番メニューが色を添え、食感を楽しませる。気づいた頃にはぺろりと平らげ、すがすがしいほどの満足感。この感覚は食べてみないとわからない。

カルビに芯タン、リブにハラミと全7種類あるバラエティに富んだ肉の弁当。その日の気分で、活力になる一箱を選んでみてはいかがだろう。